Cisco_BGPの基本_AS編

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概要

本記事ではBGPを学習する上での前提となるASの概念について記載します。

IGPとEGPについて

ASを学習する上でIGPとEGPの知識は必須となります。

  • IGP
    自律システム(AS:Autonomous System)内で経路交換を行うルーティングプロトコルとなり、OSPFやEIGRP、RIP等のプロトコルが対象となります。
  • EGP
    AS間の経路交換を行うルーティングプロトコルとなり、BGPやEGPが対象となります。
%% IGPとEGPの関係(AS内はIGP、AS間はBGP)
flowchart LR
  subgraph AS65000["AS65000 (IGP: OSPF)"]
    R1[R1] --- R2[R2]
    R2 --- R3[R3]
  end
  subgraph AS65001["AS65001 (IGP: EIGRP)"]
    A1[A1] --- A2[A2]
  end
  R3 ==>|BGP| A1
%% BGP 経路広告の流れ(AS間)
sequenceDiagram
  participant C as AS65010(顧客)
  participant T1 as AS100(トランジット)
  participant T2 as AS200(トランジット)
  C->>T1: 10.0.0.0/24 を広告
  Note over C,T1: iBGP/IGPはAS内、eBGPはAS間
  T1->>T2: 10.0.0.0/24 AS_PATH [100 65010]
  T2-->>T1: 受信・選択・ポリシー適用
  Note over T2: 条件に応じて他ピアへ再広告

ASとは

ASとは、組織毎の運用ポリシーを持った一つのネットワークのかたまりを示します。このASの管理を行っているは一般的にISPになりますが、学術系ネットワークやデータセンターなどである場合もあります。このASを識別するのに使用されるのがAS番号です。
ASは誰でも自由に作成できるわけではありません。
ASはIANAという組織が世界的に管理しており、IANAから各地域の地域インターネットレジストリ(RIR:Regional Internet Registry)にASが分配されます。
ASを作成するにはRIRまたは国別インターネットレジストリ(NIR:National Internet Registry)に申請する必要があります
※日本ではJPNICが申請を受け付けてます。
※後述するプライベートASは自由に使用することが出来ます。

%% AS番号の配布階層
flowchart TB
  IANA[IANA]
  RIR["RIR(例: APNIC)"]
  NIR["NIR(例: JPNIC)"]
  LIR[ISP/LIR]
  USER[企業/組織]

  IANA --> RIR --> NIR --> LIR --> USER

グローバルASとプライベートAS

AS番号は2バイトまたは4バイトで表現され、0~4294967295までの番号空間を持ちます。
この番号空間の中ではグローバルASとプライベートASに分かれており、番号空間は下記の表になります。

AS番号用途
0~64511、65535~4199999999、4294967295グローバルAS
64512~65534、4200000000~4294967294プライベートAS
※0、64496~64511、65535、 65536~131071と4294967295はICANNによって予約されています。
  • グローバルAS
    インターネット上に経路広報を行う場合に使用するAS番号となり、使用する場合はRIRやNIRに申請する必要があります。

  • プライベートAS
    自AS内で自由に使用できるAS番号。ISPが提供する同時のIP-VPN網はこのプライベートASが利用されている。
    プライベートASの経路情報は自AS以外に広報してはいけません。

%% AS番号の種別と範囲
flowchart TB
  subgraph Private AS
    P2B[64512–65534]
    P4B[4200000000–4294967294]
  end
  subgraph Public AS
    PUB[上記以外の利用可能範囲]
  end
  R[予約: 0, 64496–64511, 65535, 65536–131071, 4294967295]
  R -. 予約値 .- P2B
  R -. 予約値 .- P4B
  R -. 予約値 .- PUB

ASの接続形態について

各ASの接続形態は複数あり、それぞれでASを通過できたり、出来なかったりします。

  • スタブAS
    シングルホームASとも呼ばれており、他に繋がっているASが一つのみの場合を指します。

  • トランジットAS
    複数のASが接続されており、自組織以外のアドレスを接続先にアナウンスするASを「トランジットAS」と言いいます。

  • 非トランジットAS
    複数のASが接続されており、自組織のアドレスだけを接続先にアナウンスするASを「非トランジットAS」と言います。非トランジットASは一般的に、フルルートを上流ISPから取得する必要があります。

graph LR
    %% Transit AS
    subgraph T_AS[Transit AS]
        T1[AS100]
        T2[AS200]
        T3[AS300]
    end

    %% Non-Transit (Single-homed)
    subgraph NT1[Non-Transit AS Single-homed]
        N1[AS65001]
    end

    %% Non-Transit (Multi-homed)
    subgraph NT2[Non-Transit AS Multi-homed]
        N2[AS65002]
    end

    %% Peer AS
    subgraph Peer[Non-Transit AS Peering]
        P1[AS65003]
    end

    %% Transit connections
    T1 --- T2
    T2 --- T3
    T3 --- T1

    %% Single-homed customer
    N1 --- T1

    %% Multi-homed customer
    N2 --- T1
    N2 --- T2

    %% Peering (no transit)
    P1 --- N2

まとめ

BGPを学習する上でASの概念がないと、パスディストリビューリストを理解することが困難になります。また、白本での学習でもいいですが、BGPに関してはJPNICの記事で学習することをお勧めします。