VLAN間ルーティングについて

VLAN間ルーティングについて

概要

  • VLANとVLANをつなぐVLAN間ルーティングについて記載します。

構成図

構成図 構成図

  • 左がポートベースVLANの場合
  • 右がタグVLANを使用した場合
    • 右のような構成(トポロジー)をルータ オン・ア・スティック呼びます。

使われているものについて

Router and Switch Router and Switch

  • ルーターとは
    • ルーターは基本的な機能として、ルーティング(経路の決定)を行います。ルーティングはOSI参照モデルのレイヤー3にあたる機能です。基本的に直接接続されたインターフェースについては自動でパケットの配送を行います。
    • 古くはマルチプロトコルルーターと呼ばれ、様々なプロトコルをつなぐ役割がありました。現在でも様々な方式の接続を収容します。
  • VLANとは
    • スイッチングハブにて、LANを仮想的に分割するレイヤー2にあたる機能です。(ブロードキャストドメインを分割するとも言われる)IEEE802.1QやCiscoの独自規格であるISLがあります。
    • 主にタグをつけてポートから送出するタグVLANとポートが特定のVLANになるポートベースVLANがあります。
  • これら2つの機能を取り入れたものがL3スイッチです。
    • L3スイッチはルーティングとスイッチングに特化していますが、ルーターとは違い様々なプロトコルには対応していません。
    • よく言われるルーターとの違いは他にもあり、ルーターはソフトウェアでルーティングをしているが、L3スイッチはハードウェア(ASIC)でルーティングを行うと言われます。

設定の概要

設定 設定

ルーターの設定

  • ルーターは1つのポートにサブインターフェースを持たせてVLAN10とVLAN20に分けます。
    • サブインターフェースとは、メインインターフェースの中で複数のインターフェースを設定する方法です。主にサブインターフェースはVLANの設定を行うために設定します。
  • VLAN10に192.168.10.0/24、VLAN20に192.168.20.0/24のネットワークを設定します。

スイッチの設定

  • スイッチの1番ポートをVLAN10と20のトランクポートに設定し、2,3を10、4,5を20にします。

PC

  • 1番ポートにルーター、2番ポートにPC A(192.168.10.2)、5番ポートにPC B(192.168.20.2)を接続します。それぞれ192.168.10.1、192.168.20.1をデフォルトゲートウェイとして設定をします。

VLAN間ルーティングをする

ルーターのルーティングテーブル

  • ルーティングについて

    • ルーティングの優先度が存在しています。以下の順序で評価されます。
      1. ロンゲストマッチ

        • サブネットマスク長が長いものを優先的に使用します。
        • 例えば、192.168.1.0/24へのルートと192.168.1.10/32へのルートの2つが設定されている場合、後者の/32のルートが優先的に処理されます。
      2. AD値(あどみにすとれーてぃぶでぃすたんす値)

        • プロトコルによって決められている優先度)
        • よくテキストに現れる主なAD値は以下の通りです。
          種類AD値
          直接接続0
          スタティックルート1
          EIGRP5
          eBGP20
          EIGRP90
          OSPF110
          IS-IS115
          RIP120
          不明255
      3. メトリック

        • コストとか距離とか言われるやつ。ルーティングプロトコルによって違う
      • 優先度の数値は低い順に優先されます。
  • 今回のルーティングテーブル

    router(config)# show ip route
    IP Routing Table - 2 entries, 1 hidden, 2045 frees
    Entries: 2 Connected, 0 Static, 0 RIP, 0 OSPF, 0 BGP
    Codes: C - Connected, S - Static, R - RIP, O - OSPF, IA - OSPF inter area
          N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
          E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, B - BGP
          * - Candidate default, s - Summary
    Timers: Age
    C    192.168.10.0/24 [0/0] is directly connected, GigaEthernet1.1, 0:54:35
    C    192.168.20.0/24 [0/0] is directly connected, GigaEthernet1.2, 0:54:35
    router(config)# 
  • L3レベルでは、192.168.10.0/24と192.168.20.0/24が直接接続されているので優先的にルーティングされると予想できます。

  • ルーターレベルで192.168.10.1(GigaEthernet1.1)と192.168.20.1(GigaEthernet1.2)が設定されており、直接接続されている(インターフェースがアップしている・有効になっている)ので、このインターフェースに来たパケットはルーティング処理されて転送されると予想できます。

スイッチについて

  • ルーター側ではサブインターフェースを使用してVLANが設定され、1番ポートがトランクポートとして機能しており、対向にスイッチの1番ポートが接続されています。(ルーター1番ポートからスイッチ1番ポートへのリンクが存在)
  • スイッチの1番ポートはVLAN10とVLAN20のトランクポートになっています。
  • 2番ポートにPC Aが接続されており、通信を待ち受ける/送出ができる状態になっています。
  • 5番ポートにPC Bが接続されており、通信を待ち受ける/送出ができる状態になっています。
  • スイッチではルーティング機能は無効になっているため、L2レベルではフレームの転送を行っても、L3レベルのパケットの転送は行いません。

この状況でPC BからAに対してPingを打つ

Packet Tracer Routing Packet Tracer Routing

  1. Bの192.168.20.2より192.168.10.2に対してPingを行います。
  2. Bのルーティングテーブルでは、デフォルトゲートウェイが192.168.20.1となっており、ほかのルーティング情報はないため、192.168.20.1に対して192.168.10.2宛のICMPパケットを送ります。
    • Bのイーサネットポートからフレームが送出され、接続されているスイッチの5番ポートに向けて転送されます。スイッチでは5番ポートで受け取ったらスイッチ内のMACアドレステーブルを参照し、ルーターのMACアドレスがある1番ポートからタグをつけた上で送出されます。
    • この時、ARPテーブル(IPアドレスとMACアドレスの対応表)が空の場合は、192.168.20.1があるルーターのMACアドレスを知るためにまずはARPをして問い合わせを行います。
  3. ルーターでは、GigaEthernet0/0.2でフレームを受け取ってタグを外し、ICMPデータを192.168.20.1から直接接続されている192.168.10.1に転送します。
  4. 192.168.10.1より送出するためにデータを受け取ったGigaethernet0/0.1はタグをつけつつフレームを送出します。このときの宛先MACアドレスはPC Aです。
  5. Aに向けて送出されたフレームはスイッチの1番ポートに入り、タグを外しつつMACアドレステーブルを参照した上で、AのMACアドレスがある2番ポートから送出されます。
  6. スイッチの2番ポートを出たフレームはAのイーサネットインターフェースに入ります。
  7. 晴れてBから送出されたICMPのデータはAに到着しました。(この後同様に折り返しがあり、Bに到着しPingの応答結果として現れます。)

まとめ

  • VLANを構成している以上L2装置であるスイッチングハブではVLAN間の通信はできない。
  • VLAN間ルーティングとは、VLANとVLANの間でパケットの交換を行うこと
  • LAN間もVLAN間も直接接続をされている以上同様の動きをする。
  • 基本的に扱いは変わらないので不必要に怯える必要は無いはず。

詳しく書こうとしたところ読んでいてわからなくなったため、だいぶ端折った内容になりましたが、もし間違っている部分があればご指摘ください。マサカリお待ちしております…。